第64話

 三日後。


 遅くに邸に帰ってきて、かつて弟に貸していた自室で眠りにつこうとしていた。もう秋に差し掛かるかと寝台の中で思っていると――。


「丁鳩殿下。

 ……ファムータル殿下がお見えですが……いかがなさいますか?」


 扉の外から聞こえた声に目を見開く。


「兄様……」


 室内用の寝間着一枚で飛び込んできた弟は――いつかの自分のようだった。

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