第57話

 魔犬はすぐに壊れた靴を見つけ出した。

「よし、この先だ。

 大丈夫、まだ無事だ!」


 眼全体を真っ赤にした兄が言う。

 と、少し余裕のある表情になり、ファムータルをサティラートから引き取ると、

「お前、少しなら飛べるな?」

「はい」

 風を操るファムータルは、自分や他人の身体を風で巻き上げて浮かせることができる。

「よし、俺の指した先に飛んでいけ!」


 言って、血の軌跡を作り、それをファムータルに追わせる。

 

 ――鈴華は――雪鈴は、お前が迎えに行け。

 最後の言葉は、口に出さなかった。

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