第54話

「――!!」

 公務中だったファムータルが顔を引きつらせる。


 今日は新しくできた孤児院を訪問し、まだ名前のついていない赤子の名付け親になる公務だったが……皆がファムータルの変化に驚く。


「鳥を! 兄上に至急お知らせしたいことがある!」

 近衛騎士が慌てて鳥を連れてくる。それと五感を共有し、兄が今日居る離宮へ向けて飛ばす。


 孤児院の面々に向き直ると、

「すまない、この埋め合わせは必ずする!」

 言って、建物の外に居た自分の愛馬に跨り、鞭を入れる。


「どうなさったのですか? 殿下!」

「鈴華の身に何か起きた!!」


 王都の中心の呪われた宮殿、その離れであるエリシア邸と丁鳩邸に向けての時間すら、長かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る