第52話
ファムータルの肌着は二枚出来上がり、今度はかぶれたということもない。
安心して鈴華は三枚目の肌着にするレースを織っていた。繊細なレースなので長持ちするとは思えないし、多くあったほうがいい。
朝食と昼のお弁当は既にエリシア邸に届けてもらっている。エリシア邸の侍女長から、本当に食べる量が年相応になって嬉しいと感謝された。
二人の面会は、丁鳩と前国王の許可制だった。ファムータルが魔力喪失までやってしまったことがまだ尾を引き、自由には会えない。
その代わりに手紙のやり取りは盛んだ。
「鈴華様、今朝は丁鳩さまのお食事も作られたそうですね」
ジュディがにこやかに言う。
「丁鳩さま、何か仰っておられましたか?」
「ええ、美味しかったと言ってくださいました。
ファムータル殿下とは比較にならないくらいお食べになるけど、3食作ってくれるかと、ご冗談だと仰いながら」
「……そうですか……」
ジュディは、鈴華が首から下げたファムータルの髪の束を見詰めた後、持ってきていた鞄を手に取り、
「お天気もいいですし、お散歩に行きませんか?」
「え? でも、殿下の肌着が……」
「それは良うございます。ここのところ働きづめでしたし、外の空気をゆっくり吸われてください」
鈴華が反論するより早く、執事まで鈴華を立たせてジュディのほうに押し付ける。
「で、でも……織らないと……」
「お休みは必要です。参りましょう?」
ジュディは強引に鈴華の手を引いて部屋を出た。
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