第41話

「…………

 ……うう……」


 なんなんだ……これは……

 ただ打ちひしがれる。


 ろくに眠れなかった夜の夜明け前、兄がいきなり掛布を剝がしたかと思えば、大事な部分が濡れているのを確認し、にっこり笑って公務に出て行った。


 彼女も目を覚まし、どうしていいか分からないでいると……洗うから脱げと言われた。


 抵抗はしたが、元気になった彼女と身体の自由が利かないファムータルでは勝負にならず……着替えさせてもらった。


 夜中じゅう張りつめていただけあって、疲労感がとんでもない。

 それ以前に敗北感に打ちのめされている。


 ……全部見られた……


 もう頭はそればかりだ。


 それだけではない。兄が自分の部屋に魔鏡をつけていたということは、あの恥ずかしい……


「……ううう……」


 泣きたいが、泣いたら負けだと、泣き虫のくせに必死に堪える。


「ファムータル殿下?」

「わああぁぁああ?」


 気づけば彼女が戻ってきていた。


 寝台で食事をするために専用のテーブルを持ってきて、そこに押してきたワゴンから色々と並べてくれる。


「鈴華の手作り?」


 期待通りに彼女が頷くと、上機嫌になって次々口に入れ始める。


 ……もう立ち直ったわ……

 

 どこまでも無垢な少年だが……成長の兆しは既に出ていた。

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