第30話

――【4人】会談だ。


 一人。隣国の前国王。

 一人。魔国の王太子。

 一人。一番手柄の娘。

 ――一人。亡き母の写絵。


【この写絵にエリシア義母様の魂が宿ってるんだ。ライが危ないって義祖父様に伝えたのも義母様。

 ライには内緒にしてくれ】

丁鳩はさらさらと紙に書く。


 ファムータルに内緒の話は筆談――それはファムータルが王族でも群を抜いた風の魔力を持っていることからだった。


 声も風だ。どう伝わるか分からない。


【エリシア……鈴華に文句はないようだな……】

 写絵のみ、父の魔力を借りて頭に直接語り掛けてくる。

 丁鳩と前王は、写絵にかなりの時間説教されていた。

 エリシアの写絵は、にこにこと鈴華を見る。


【問題は、今回の件をライにどう伝えるかってことだが……】

【内緒にしたほうがいいです! きっと壊れちゃいます!!】


【……鈴華が言うと、説得力あるな……】


【私も鈴華に賛成だ。あの子はまだ人の邪心に疎すぎる】


 暫く話し合った後、

【よし、それじゃ、暗殺未遂だけ残すぞ!】

 その方向で4人会談は解散した。


 だが――目を覚ましたファムータルにとって、魔国の医者は未だに【いい先生】だった。


 再度行われた4人会談で、危機管理の強化が決定されたのは言うまでもない。

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