第29話
「ライ! 無事か!?」
来るのが遅い。そう言いたいのを我慢して、入ってきた3人のうちの一人――父親の魔力を借り、3人に写絵と写音で何があったか伝える。
男2人は固まった。
頼りにならない二人を置いて、未来の娘が息子に近づいて状況を確認し、
「お義兄様、お義祖父様!!
解毒薬を!!」
未来の娘がきちんと動いてくれているが、肝心の力を持つ二人は固まったままだ。
娘は二人を順に蹴る。
「……あ……」
「解毒薬!!
ないと殿下は死にます!!」
「あ……ああ!
私の部屋にある! 取ってくる!」
慌てて父が駆け出す。
義理の息子は、証言させるため彼女が皮一枚で生かしていた犯人を魔力封印しながら縛り上げる。
ややあって、父が戻ってきた。
「私が作った解毒薬だ。
どんな毒も消せるが……作るのに制約があり、これ一つしかない」
それを聞くと、義理の娘は自分が解毒薬をあおり、口移しで息子に飲ませる。
父の解毒薬が毒と反応した時の光が、息子を覆った。
今まで見たこともない光の量に、父も義理の息子もこの毒がどれほどか知ったようだ。
娘は冷静に、土気色だった顔に命の色が戻るのを見届け、身体に傷がないか調べ始める。
「外傷はないようで……」
言いかけ、気づいた。
ピアスと指輪からまた、何か不吉なものが出ていると。
「このピアスと指輪、毒です!!
お義祖父様!!」
「ま、まさか、あれで解毒できないわけが……」
「いや、違う! 呪いだ!!」
言うや否や、義理の息子は手袋の上から自分の手の甲を噛み切り、溢れた血をピアスと指輪に注ぐ。
――崩壊し、呪いが消えていく。
「義祖父様! このままじゃ弱って死ぬ!!
一緒に頼む!!」
義理の息子と父によって、魔力が付与され始める。
「良かった……」
助かったことを見届けた娘は息子の衣類を探してこちらに来る。
――男って頼りにならないわね……
娘にそう語り掛けるが、魔力のない娘は分からない。
――一番のお手柄よ。ありがとう。
写絵はにっこりと微笑んだ。
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