第12話

「エルベットの国王陛下!」


 呪いの炎が渦巻き、倒壊しかけた王宮で動くものは呪王クズだけだった。

 これでは娘や孫の安否も分からない。


 呪王クズは完全に正気を失っており、娘の名前をぶつぶつと呟いては王宮内を彷徨うのみ。

 情報が聞き出せないことは明らかだった。


 積み重なる灼けた躯の中に生存者がいないか探すしかないと思った頃、物陰から自分を呼ぶ幼い声がすることに気づいた。


「君は……王太子殿下か?」

 呪王クズの視界に入らないようにだろう。

 5歳の割にしっかりした調子の少年は、柱の陰から手招きし、

「弟はこちらです! 早く!」

 言うなり、エルベット王を先導するように駆け出す。


 エルベット王は、自分と連れて来た騎士団、そして先導する魔国の王太子を水の結界で守り、後をついていった。

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