第68話

「いや、ルイの話」



ルイ……?

今、ルイって言った?

なんで? 朝帰りした事じゃなく?


ってかなんでルイ?

父さんはいつもいつも、ルイの話を俺にしなかった。いつもいつも蚊帳の外で……。



「……ルイ…?」



思わず眉が深くなった。



「今度、一時帰宅することなってな。1泊やけど」



誰が?

ルイが?

帰宅する?

1泊?


────この、家に?



「──…え……?」



鏡も見ていないのに、自分の顔が青白くなるのが分かった。ルイが帰ってくる?そんなバカな。だって、何年かかけて治療していくって……。もう治ってきてるってこと? いや、1泊ってことはまだ治ってない?



なんで?

なんで?



まだ治ってないのに、帰ってくるの?



「ルイを……外に出すの?」



震えた声が、口から出る。



「イヤか?」



イヤだよ、イヤに決まってる。

また殺されるかもしれないのに。


なんでそんなこと聞く?

父さんだって、分かってるくせに……!!!



「な、……治ったってこと?」


「分からん、でも落ち着いてはおる」


「分かんないって、なんで出すの?!」


「ウミ」


「出さないでよ!!!」



ハアハア……と、大声を出したせいで息が荒くなる。



「ルイがおるんは刑務所ちゃうで」



刑務所って……、刑務所と変わらない。

父さんはルイがヒカルの首を締めたの、忘れたの。ずっとずっと施設に閉じ込めとけばいいのに!!



「……むり、むり、……こわい」



涙腺が熱くなる。千尋の事をルイに聞こうと思ったのに……。やっぱり無理……。



「お願いだから出さないで……」



この家に帰ってくるな。

項垂れながら言えば、父さんは小さく頷いた。



「……わかった」



分かった?

その分かったはどっち?


結局ルイを外に出すの? 出さないの?



「か、かえってくるの……?」


「ウミ」


「やめて……おねがい……」


「分かってるよ、ちょっとまだ早かったな、ごめんな」




いつの間にか立ち上がり俺の頭を撫でる父さん……。



「さっきヒカルにも聞いたんやけど」


「……?」


「ヒカルは答えやんかった」


「……どういういみ?」


「別に外泊させればいい。けど1番優先するのはウミやってな」



……俺?



「ウミ」


「……」


「お前がいいって言わん限り、ルイは出さん」


「え……」


「やからそんな顔すんな」

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