第67話

家に帰れば、母さんがいた。母さんは何かを言いたげな表情をしていたけど、何も言わず2階にあがる俺の背中を見送った。もしかしたらヒカルが何か言ったのかもしれない。

そっとしておいてとか。



ヒカルの部屋に行って、ヒカルに謝ろうと思った。言いすぎた、ごめんなさい。ヒカルと言い合いたいわけじゃないって。お願いだから嫌わないで……って。


でも、ヒカルの反応が怖くて、ヒカルの部屋に行くことができなかった。


あれがお前の本音だろう?って、言われるのが怖かったから……。




制服に着替えて、部屋から出ようとした時、──コンコンとノックの音が響く。

ヒカルだと思った。

俺が帰ってきたことに気づいて、部屋に来たのだと。


どうしよう……。

なんて言おう。


そう考えてしまうけど、ヒカルの事は無視できないから。「……はい」と静かにゆっくりと扉を開けた。



視界にうつるのは、明るい茶髪のはずだった。



なのに、その髪は赤く──



なのに想像とは違う色に、



ルイ……?!



そう脳が勝手に判断して体がビクッと震え、恐怖で後ずさりそうになったけど──……



この家の赤髪はルイだけじゃないこと思い出し、冷や汗を流さずにすんだ。



「入っていいか?」



そう言ったのは、ルイとヒカルの父親。

そして血の繋がりのない俺の父親。



──父さん……

なんで?この時間は仕事じゃ………



「え……?」


「ちょっと話あるから」



話……。昨日、家を抜けたから、怒っているのか。でもヒカルもルイだって、帰ってこない日とかあったのに?



「……うん…」



父さんが部屋の中に入ってきて、扉を閉めた。



勉強机のイスに座る父さんは──ルイとよく似てる。ほんと、傍にルイがいるみたいだった。ちょっと父さんの方が背が高い分、威圧感がある…。



「さっき、一瞬ビビったん、ルイと見間違えたんか?」



さっきのノックをした後のことを言ってるらしい。…そうだよって言ってもいいのか。

けど、実際その通りだし……。



「……うん、ちょっとびっくりした…。ヒカルだと思ってたから余計に」


「仲良いもんな、ふたり」


「……話ってなに? 昨日のこと?」

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