第69話

「……それは、俺がいいって、言わないかぎり……ずっと閉じ込めるってこと……?」


「そうやな」


「おれ……言わないよ?出していいって。ルイが死ぬまで……治ったとしても」


「ええよ」



ええよって……。



「ほ……本気?」


「やな」


「ヒカルに言われたから……?」


「なあ、ウミ」


「だ、だって、今までルイの事しか……!!」



考えてこなかったのに。

いつもいつも、可哀想なルイって。



「ずっと我慢してたやろ?」


「……っ、」


「ごめんな…」




なんで。

なんで、そんなこと、今更。

なんで今更、謝ってくんの。




「別に…夜遊びに行ってええ。どこ行ってもええし、我慢せんでええ」


「父さん…」


「その代わりどこおるか、ちゃんと言ってくれ。急におらんなるな……」




昨日のことを持ち出してきた父さんに、顔を下に向けた。

────急に、いなくなるな。

高校を卒業したら、誰にも行き先を知らせず家を出ようと思っていたのに。



もしかしたらヒカルが、父さんに何か言ったのかも……。




「父さん……」


「ん?」


「…結局、俺とルイ、どっちが大事?」


「──…大事か、…そうやな。ヒカルも大事やしなぁ。3人とも差はほとんどないけど」



ほとんどないけど?



「初めて大事にせなあかんって思ったのはウミやな」




懐かしそうに笑う父さんに、少しだけ眉を寄せた。


なんで?なんで俺?

俺は3人目なのに……?


ルイは?ヒカルは?

大事じゃなかったってこと?



「……どうして、俺が海吏くんの子供だから?」


「ちゃうよ」


「……だったらなんで俺なの」



父さんは、曖昧に笑った。



「生まれたばっかで抱っこしたの、ウミが初めてやったからなぁ」


「え?」



生まれたばっかり?

なんで?

ルイとヒカルは?


え?



「どういうこと……?」


「正直いうとなあ……ウミ、これ陽向にも内緒やで?」


「え?」


「ほんまに父親なんやなぁって思ったん、ウミが生まれた時やねんな」


「……え、え?」




だから、ヒカルとルイは?




「やからルイが1番とか、ウミが海吏の子やからとか、そんなんで優先考えてるわけちゃうねん」


「……2人が生まれた時、父さんいなかったの?」


「そう、まあまた今度な、その話。ウミがヒカルぐらいになったら言おうと思ってる」




だったらヒカルは知ってるの?

あんなにも仲良い両親なのに。

どうして俺だけが海吏くんなのか。



俺はてっきり、一夜の過ちかと、思って……。



両親の過去──……




過去──……千尋が言ってたメビウス……




まさかそれと関係あるんじゃ……。

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