第62話
大黒──…、千尋は今の状態を少しずつ話し出した。大黒仁という父親は、最近少し様子が変だと。
「……変?」
「はい、なんていうか、彼氏できたのか?って凄く聞かれるようになって」
男?
言っている意味は分かるが、それのどこな様子が変になるのか分からず。
「どういう意味? ってか彼氏いるの?」
「いないですいないですっ、いればホテルに入ってません!」
千尋は慌てて胸の前で両手をふった。
「そんなこと言われたこと無かったんです。でも、ここ最近、ウミくんの連絡が来るのを待つのにスマホを見ることが多くて。それを見て、父親がその質問をしてきて」
「彼氏できたのかって?」
「はい、でもそれ1回じゃないんです。何回も、毎日言ってくるんです。いないって言っても、本当はどうなんだ?とか、いるんだろ?って。私それが気持ち悪くて……」
何回も、毎日?
「どう思いますか?」
どう、と言われても。
気持ち悪いしか、というよりも怖い。
毎日毎日、見張られているみたいで。
見張る?
確か、ルイもそうだった。ルイも俺のすることやること、全部見張ってた。
今日は何してた?って、何回も何回も聞いてきた。
────……気持ち悪い
俺もルイに対してそう思ってた。今でも思っているけど。
千尋の説明はまるで、異常性癖が起こっているルイみたいな……。
「ねぇ、それってさ、対象になってない?」
「え?」
「確信はないけど、もしかしたらあんたが対象になってるかもしれない」
「た、対象ってなんですか?」
「対象っていうのは、異常性癖を向けてる相手。あんたの父親も異常性癖を持ってるだろ?」
信じられない、そんな顔をする千尋。
おぞましい……一気に顔を青白くさせる千尋は、「ありえない……だって、何歳離れてると……それに、」と、顔を横にふった。
「NTR……ってことは寝取り。だからしつこく男いるのかって聞いてくるんだと思う」
「……ありえない……だって、血が、」
繋がってるのに?
実の娘と、体を重ねようなどと。
口元を押さえ、吐きそうになっている千尋は「ありえない……」と、苦しそうに呟いた。
「〝普通〟じゃないから、異常性癖は」
「親だよ?!」
「そんなの関係ないよ、兄弟に性癖を向ける狂ったやつも、世の中にはあるんだから」
気持ち悪い、気持ち悪いと、カタカタと肩を震わす千尋に、「……大丈夫」と、包布をかけた。
包布にくるまる千尋は、青ざめたままで。
「男ができたって絶対言うな、そうすればやられない」
「……っ……」
「絶対言うなよ。いくら脅してきたとしても」
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