第57話

「……なっちゃんは、ルイしか見てねぇよ」



分かってるよ。そんなこと。



「ウミ、お前さ?」


「……」


「好きになるな、とは言わないけど」


「……」


「ルイがいなくなって、ハメ外しすぎじゃねぇか?」



ハメ?



「今回のことがルイの耳に入ってみろ。ルイは施設を抜け出してでもなっちゃんに会いにくる。どうなるか分かるだろ?」




分かるよ。ルイの頭はイカれてる。

もしかしたら今度は俺の首をルイが絞めるかもしれない。奈都の首かも。



「もうこれ以上、ヒカルみたいに好きって言うなって?」


「ウミ」


「俺にはヒカルしかいなかった。友達も、ルイが怖くて作れなかった。喋るは喋る。でも、小学校の時はルイがいたから……。放課後に遊んだことなんて一回もない。中学になっても親しい友達なんか、作れない。ヒカルは見た事ある?俺の友達。スマホ見てもいいよ?連絡先、10人もいないから。奈都でやっと7人目なんだよ」



親、海吏くん、ルイと、ヒカル。

奈都と──……最近交換した大黒って女だけで。



「だから、好きだって思ったら……それぐらい言ってもいいだろ」


「……」


「……ヒカルはいいじゃん。彼女も、友達も、いっぱいいて……」


「彼女って……」


「いっぱい、女、連れ込んでた。声も聞こえてた。知ってるよ。ずっと家にいたんだから」



ルイも、だけど。

奈都と付き合う前は、色んな女と──



「ハメって、なんなの。これって普通じゃないの?好きな子できたぐらい、〝普通〟だろ!」


「……うみ」


「ヒカルと同じ子を好きになってごめんって思ってるよ。でも、でも……、俺は奈都さんが……」


「……俺とルイ、2人とも、なっちゃんとやってても?聞こえてたなら、ルイとやってる時も聞いてたんだろ?あれ聞いててもなっちゃんを好きって?」


「あれはルイが無理矢理させてた、嫉妬させない為に奈都さんが相手してた」


「まあ、そうかもだけど……」


「俺はしないよ、無理矢理なんか」


「……」


「譲ってよ」


「ウミ……」


「ヒカルこそ、奈都さんと連絡とらないで」


「……」


「──……今までずっと、生まれからずっと……ずっと我慢してた」


「……」


「何回も何回も、なんで俺ばっかりって。本当に苦しい。ヒカルには分かんねぇよ!ヒカルはルイの対象になった事ないから!!」


「……」


「友達も、──全く、ずっと1人だった俺の気持ち、──……ヒカルに分かんのかよ!!」


「……」


「俺の気持ち、わかってくれんのは奈都さんだけ……」


「……」


「だからもう、解放してよ、これ以上……1人はいやなんだ…………」

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