第55話

奈都は戸惑う動きをする。

なんで?

どこで?

どうしてそうなった?

そんな顔をする奈都をずっと見ていれば、俺の視線に耐えられずか「──…っ、」と、軽く息を飲んだ。



「ご、ごめん、あの、ちょっと待って…」



ミルクティーを持つ手に、力が入っているのが分かった。



「え、あの、ウミくん、私のこと嫌ってたよね……?」


「うん、今でもルイを選んでる奈都さんは嫌い」


「……ま、まって…」


「……」


「と、とりあえず今日は帰ろうか。……家で、考えてもいいかな」


「ルイがいるから無理って言わないの?ヒカルみたいに」


「そ、そうだけど、ちょっと……今日は、これで、」




立ち上がろうとする奈都は、帰る気で。

〝1人じゃない〟と言った奈都は、俺を1人にしようとする。



奈都が離れるのが嫌で、「待って」と腰を上げ立ち上がろうとする奈都の二の腕を掴んだ。

勢いよく引っ張りすぎたのか、それとも奈都の力が弱いのか。あっさりとイスに戻った奈都は、「うみ、くん」と戸惑った声を出した。




「もうルイと電話しないで」


「っ、」


「また、連絡するから」


「……」


「ずっといてね……」

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