第54話

「良いように、考える……?」


「うん」


「これから先のこと?」


「そうだよ。だからヒカルとも、きっと仲直りできるって、そう信じてもいいんじゃないかな?」



ヒカルと仲直り……。

そう奈都が言うのなら。



「……あ、のさ」


「なに?」


「だったら、奈都さんがずっと俺のそばにいることも考えていいの?」



自分がどういう意味で口走っているのか、分からなかった。奈都が笑みをやめて、〝え?〟って顔をしてから、自分が何を言ったのか分かり。



「ルイと別れたら、俺のになるのもありえる?」



けど、質問を止められなかった。

何を言ってるのか、分かっているのに。

分かっているのに……。

今目の前にいるのは、ルイの彼女で。



────ヒカルの……



ヒカルの好きな子。




「…………え、あの、どういう意味で、」



困ったような顔を向ける奈都は、目が泳いでいた。



「…思っていいよね? 奈都さんがそう言ったんだから……」


「え……?」


「ほしいなって、思っていいんだよね?」



あからさまに、戸惑う顔つきをした奈都。




自分でも信じられなかった。あんなにも嫌悪感がして、嫌いだと思っていたルイの彼女。

それなのに……。



奈都の魅力に気づいてしまった時にはもう遅い。



だけど、今考えれば、納得がいく。



だってあのヒカルが、好きになった子なんだから……──。



いい子だって、分かってたはずなのに。




「あ、……えっと、お姉さんの立場って意味で?」



奈都は思いついたように、はぐらかす。



「姉がほしいとは思ったことない」



ヒカル以外の兄弟はイラナイ。



「……保護者的な……?」


「ルイと別れたら、…ずっといてよ」


「──…」


「信じて待ってたら、俺の彼女になってくれる?」

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