第49話

奈都の学校は知ってる。ヒカルやルイと同じ学校だから。久しぶりに走ったから、駅に着くまでには息が乱れていた。

運良く来た電車に乗りこみ、その中で息を整える。どちらかと言うと運動はあんまり得意じゃない……。




奈都が通う高校の校門前で、彼女を待った。ちょうど下校時刻だったらしい。何人かの生徒が校門を通っていた。──チラチラと中学の制服を着てるおれが立っていることに、誰?という目線があったけど。特に話しかけられることも無かった。

もしこれが赤髪なら、ルイの弟?と話しかれられたかもしれない。



校門を通るのは、ヒカルもいる。

もしヒカルが先に通ったらどうしようと思いながら──奈都を待った。



5分、10分。

もしかして俺が来る前に帰った?と不安になっている矢先、「──ウミくん?」と、聞きなれた声が聞こえた。



目の前にいたのは、当たり前だが制服姿の奈都で。俺がいることに驚いているようだった。


今日は少しついているらしい。ヒカルよりも先に奈都と会えた。




「──…あの、俺」


「あ、もしかしてヒカルのこと待ってるの?」



笑いながら、そう言った奈都。


違う、奈都に会いに来た。奈都にヒカルのことを相談しに来た。どうすればいいか分からなくて……。



「ちょっといい…?」


「え?」


「話、あって……」


「話って、え、私のこと待ってたの?」



また、驚いた表情をした奈都は、数歩と俺に近づいてくる。



「いつから待ってたのっ? ごめんね、もっと早く来ればよかったね」



俺が勝手に来たのに謝ってくる奈都に、申し訳なさを感じながら。



「…時間ある?」


「うん、大丈夫だよ」




笑顔で対応する彼女に、少し心が痛くなった。

なんであんなにも酷いことを言ってしまったんだろうって……。

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