第42話

〝普通ってなんだろうね〟

そう言ったなっちゃんは、「さっさと寝てよ、授業に戻れない」と、呆れたように、面倒くさがりながら言った。



「なっちゃんがいると緊張して寝れない」



ほんとに。

どれだけなっちゃんに惹かれてるか…。


なっちゃんの言葉一つで、どれだけ救われるか。




「ヒカルってそんな繊細だった?」


「めっちゃくちゃ繊細、すぐ心折れちゃう」


「じゃあ戻るよ?もう教室行ってもいい?」


「なんで急に冷たくなんの」


「ヒカルがいつも意地悪ばっか言っくるから」


「俺最近言ってなくね?」


「自覚ないの?」


「自覚って…」




ほんとに無いんだけどな…。

あんまり、会話という会話も最近してなかったし。



「いいよ、気づかなくて。それがヒカルだもんね」



嬉しそうにそう言ったなっちゃんは、「目、閉じて。ちゃんといるから」と、前髪をあげるように頭を撫でてきた。




「起きてもいる?」


「さあ、どうかな」


「いて欲しいんだけど…」


「ヒカルが寝たらね」


「ほんとに緊張して寝れないって」


「じゃあ戻ろうか?」


「…それはいや…」


「どっちなの」




わかんねぇよ…。


なっちゃんが俺の彼女なら、一緒に寝ようって、布団の中に入れるのに。



なっちゃんが俺のだったら…。



「……1人になりたくない」


「うん」


「いてよ」


「…」


「──…絶対、何もしないから」

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