第40話

何かが頭に触れた。

その触れたものは、髪を流すように撫でる。

なっちゃんが俺の頭を撫でてるって思えば、ちょっとっていうか、結構嬉しくて。



「ヒカルの髪ってサラサラだね」


「……そう?」


「ちょっとルイくんに似てるかも」


「えー…それやだなぁ」




クスクスと笑うなっちゃん。

そのなっちゃんの表情を見たくて、腕をどかし、なっちゃんを見つめた。



「ごめんね、軽率だった。ケンカするとは思わなかった…」


「ううん、なんでなっちゃんが謝るの」


「…」


「ウミ、何も知らないから。だからこうした方がいいってそればっか。ウミを説得するために言ったのは仕方ないと思ってる。ウミはずっと俺を選ばないなっちゃんをよく思ってなかったから」


「…うん」


「今もし俺となっちゃん付き合ったら、襲った男なんかやめとけってなっちゃんに言うんだろうなぁ」



軽く笑って言えば、なっちゃんは撫でる手を止めた。



「ウミはまだ子供なんだ…」


「うん」


「何も知らない」


「…うん」


「あいつの世界はルイだけだったから」


「…」


「まだ、なんも知らないただの子供なんだよ…」


「ひかる…」


「お願いなっちゃん…」


「…」


「もし、ウミが何か言ってきたら俺に言って。ウミをもうルイに巻き込まないで欲しい」


「…うん」


「誰も信用できない大人になってほしくない」


「ヒカルって…」


「うん?」


「なかなかのブラコンだよね」




なっちゃんの言葉に、はあ?と顔を顰めた。

クスクスと笑うなっちゃんは、また俺の髪を撫で始め。




「やめてよ、ブラコンって、コンプレックスっていう病気なんだよ。普通じゃない。そーいうのはルイみたいな野郎がするんだよ」


「そうかな?」


「そうだよ」


「弟を大事に思うお兄ちゃんって、私好きだけどなぁ」


「……それでもブラコンは嫌」


「ふふ、」

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