第23話
…いや、決めつけはよくないか。
決めつけてしまえば、物事は進まない。
「多分、そういうのを知ってるのは兄だと思う。俺はあんまり、関わらないように生きてきたから」
ルイの事があって、俺はずっと守られていたし。
「両親の過去も、複雑とは聞いてはいるけど、詳しくは知らない。そのメビウスっていうのも、悪いけど」
「…そうですか、」
「1番、俺の両親に何があったか聞けば早いんだろうけど。あんたは知られたくないんだろ?」
「知られたくないというより、怖いんです」
「怖い?」
「大人はすぐに嘘をつくから…」
そんなもの、人によると思うけど。
でも、大黒にとっては、優しい父親が本当は自分を殺そうとしてるんだから、そう思っても仕方ないのかもしれない。
──毎日、殺されるかもしれないという恐怖…。
「あんたが俺に協力を得たいのは、どうすれば死なずにすむかってこと?」
それに対して、頷き。
「『生きてるのは神城陽向だけでいい』ってことは、母親があんたの父親に何かをして、死なずにすんでるんだろ」
「そう、だと思います。だから、私も、母も…。あなたのお母さんと同じことをすれば殺されずにすむんじゃないかって」
それをさぐる?
どうやって。
そんなもの、母親に何があったか聞かないと分かりはしない。
聞くのか?母親に。
寝とった男のことを覚えてるか?って。
そんなこと、聞けるわけがない。
そもそも大黒が、親には言うなって言ってる。
…ヒカルなら、どうするだろう。
「……過去のことを調べないと、分からない」
「はい…」
「その時の当事者…、関わりのあった人達に聞くしか…。全員大人だろうし。聞くというよりも、怪しまれず向こうが口を滑らす、感じの方がいいか」
「目星はついているんですか?」
目星…。
ある程度はつく。
橘さん、小早川さん、南野さん、あとは阪下さん。だけど阪下さんは滅多にこっちへは来ない。ルイ関連で数ヶ月前に来ただけ。住所というよりも家を知っているのは阪下さんを除く3人…。
小早川さんは医者で頭がいいし、探りを入れれば勘づかれるかもしれない。
だったら橘さんは?
いや、橘さんのところにはヒカルがしょっちゅう会ってはいるけど、俺は会いに行ったことが2回ぐらいしかない。いきなり会いに行っても怪しまれるのがオチ。
残るは南野さん…。南野さんなら『ご飯行かないか?』ってたまに誘ってくる。南野さんならこの前行けなかったからとか、理由をつけてなら誘えるかもしれない。
…いけるか?
どうかな。
南野さんと父さんは結構電話をしているのを見かける。こういう会話をしたって父さんに言わないか?そこから母さんにバレないか?
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