NTR2
第22話
待ち合わせは5月13日の午後4時半。
場所は家から三駅離れたファミレスだった。
学校帰り制服のまま来たから、待ち合わせの時間よりも早く、まだ相手のいない席につきアイスコーヒーを注文した。
腕時計の時間を見れば16時にもなっていなく、まだ来ないだろうと鞄の中から参考書を開き受験に向けての勉強をする。
英文を頭の中で考え、日本語に訳していると、注文していたコーヒーが届き1口飲んだ。テーブルに置き、次のページと参考書をめくろうとした時、「あ、あの…」と声が聞こえて。
視線だけ声のした方へと向けた。
いたのは待ち合わせをしていた女で。
女から腕時計に視線を移し今の時刻を確認した。やっぱりまだ16時になっていなく。
「早いね」
そう言いながら参考書を閉じて鞄の中に入れた。
「か、神城さんも。待ち合わせ16時半ですよね?」
──女、大黒は戸惑いながら言うと、向かい合うようにイスに腰かけた。相手も制服で、学校帰りに来たらしい。
初めて会った時と同様で、女の肩が薄いなぁと、どうでもいいことを考える。
「…まあ、」
「ごめんなさい。私が16時半にここでって言ったのに、待たせてしまって…」
勝手に早く来たのは俺だから、別に謝ることじゃないのに。だけど女に優しさを見せれば、懐に入ってくるかもしれないから。大黒の言葉をスルーしてメニュー表を渡した。
「別に。なんか頼めば?」
「神城さんは何か頼んでますか?」
「コーヒーだけ」
「そうなんですね、私もコーヒーにします」
大黒はメニューを受け取ったものの、中身は見ず、定員にコーヒーを注文した。
「家から遠いのに、ごめんなさい…」
「別に」
「あ、私の家は、ここから4駅ほど神城さんの家とは逆の方で」
そんな事どうでもいいし、聞いてもない。
早く本題を話せばいいのに。
机で頬杖をつき、大黒を見れば、どう話だせば分からない様子だったから。
「──手紙の内容だけど、」と、俺から話を切り出した。
「正直言うと、何言ってんの?が多くて。簡単に言うとあんたの父親があんたとあんたの母親を殺そうとしてるって話? その男がうちの母親と知り合いってことでいいの?」
「は、はい…。あの、神城さんは知ってます?メビウスって組織のこと」
メビウス…。
「お母さんが言うには、そこは異常性癖があつまる組織だったって」
異常性癖…。
メビウスっていう単語は知らないけど、〝そういうもの〟があるのはなんとなく知っていた。
詳しいことは聞いてない。だけどヒカルからそれらしい事を教えてくれた。
あれは奈都とヒカルが橘さんのところにルイから避難してた後…。数日ぶりにあったヒカルの表情がいつもと違ったから、何かあったのか聞いてみた。
ヒカルは確かあの時、『父さんの友達みんな、性癖が集まるとこにいたらしい。その友達以外のウゼー奴が俺にちょっかい出してきただけ』と、言っていたような。
〝ウゼー奴〟…?
大黒の父親と同一人物だったりするか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます