第21話

母さんにコンビニに行ってくると言い、一旦外に出た。家だと誰かが聞いているかもしれないから。


手紙に載っていた番号に、電話をかける。

大黒っていうさっきの女はすぐに出た。『あ、も、もしもし、』って、まさか電話がかかってくるとは思わなかったのか戸惑っていた。



「さっきの、神城ですけど」


『お、大黒です……。す、すみません。まさかかかってくるとは思わなくて』



思っていたような言葉。


その声のトーンに苛立った。

家族の名前を出してきて、あんなにも脅迫じみた内容に、気にならないわけがない。高い確率で電話がかかってくることを分かっていただろう。



「ずるいな、かかってこないとでも思ってた?」


『あ、いえ……。来ても、今日はないだろうなって…』



だとしたら、かかってくるかもしれないとは少なからず思っていたこと。



「聞いていい?」


『え?』


「なんで俺だったの?俺以外にも兄弟はいる」


『それは……』



大黒は言いにくそうにすると、戸惑いがちに口を開いた。


『ルイっていう人は……休学中で、探してみたけど見当たらなくて。ヒカルっていう人は遊んでそうで、真剣に話を聞いてくれないと思ったから……』



ルイは当たってる。

でもヒカルは違う。

ヒカルは悩みがあれば解決してくれる。確かにヒカルは遊んではいたけど、真剣に話をしてくれる。もし、大黒がヒカルに相談していたら、ヒカルはきっとこいつの話を聞いていた。


大黒がしたのは外見の判断。それに対して苛立った。

というかそもそも、外見なら俺だって赤い髪。それは遊んでそうに見えないのかって思ったけど、今は黒くしていることを思い出した。



「そう…」


『あの、ごめんなさい…』


「……分かった、少し話を聞かせて」


『え、ほ、ほんとに……?』


「その代わり」



俺のすることはただ一つ。

ヒカルの〝普通〟を守ること。



「その代わり、ヒカルには言わないで。そうすれば協力するから」



ヒカルを、〝異常性癖〟には巻き込ませない。

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