第312話

「……タクミ…」


「ん?」


背中をずっと撫でていたタクミの手が、あたしが呼びかけたことでピタリとその動きを止める。


あたしはタクミの胸を押して少し距離を取った。


「……少しは、落ち着いたか…?」


あたしの様子を窺うようにそう言ったタクミに小さく頷く。


まだ、涙は止まらないけど、それでもさっきよりはマシだった。

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