第311話
泣いたからって、さっきの光景を忘れることなんてできない。
それはさらに鮮明になっていく。
そのたびに、もう枯れてもいいくらいに泣いたはずなのに、それでもまた涙が溢れてきた。
ただひたすら泣くだけのあたしの背中を、タクミはずっと撫でてくれていた。
それからどれくらいの時間が経ったのか、足元の影がだんだん長くなってきていることに気づいた。
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