第178話

あたしは、気づかないフリをすることで、タクトを繋ぎ止めていた。


“一番好きだよ”


その言葉の裏に。


気づかないわけがないはずだったのに。


自分の小さなプライドが、それを認めることを邪魔した。


認めてしまえば、あたし一人、タクトを好きなだけだと、


―――気づいてしまうから。


囁く言葉は甘く。


けれど、とても残酷で。


嬉しいはずなのに虚しくて。



―――限界だったはず、なのに。

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