第86話

図書室に入ると先に同じクラスの香川さんが受付に座っていた。

「月島さん、良かった。今日の当番忘れてるのかと思った。」

「え、遅刻してる?」

そう言われて私は腕時計を見る。

時計の針は3時半、図書室のデジタル時計は15時45分と表示されている。

「あ……、時計止まってる。」

「え、ソーラーじゃないの?」

香川さんは笑いながら私の腕時計を見た。

「うん、卒業したら新しいソーラー時計買わなくちゃ。」

そう言って私は腕時計を外して荷物を足元に置いた。


周りを見ると利用している生徒が今日は多いと思った。

「来月期末考査だから結構利用者多いね。」

「そだね、月島さん凄く勉強してるよね、よく集中力切れないよね。」


そんなことないんだけど。

何かに集中してる方が滝川君を思い出さなくて済むから……。

心の中は滝川君を諦め切れてはいなかった。

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