第74話

「な、なんで知ってるの?真美が言ったの!?」

はるかは僕から視線を逸らす。

ちょっとマズいこと聞いたのか?

「でもあの時滝川君に抱きついたのは自分の意思だ…し…、」

はるかの声が弱々しくなる。

その言葉で何となく分かった。


「ああ、花村さんからはるかが抱きついたら僕が喜ぶとかそんな話?」

「あ……、そんな話…デス。もうこれ以上は許して。」

はるかは右手で両目を隠す。

そんな姿も可愛いと思った。


はるかは知っているんだろう、僕が医学部に行かないということを。


それで僕に対してのハードルが下がる?

それとも医者にならない僕は……もうそんな価値もない?


「た、滝川君。」

先を歩く僕にはるかは追いかけてくる。

「ん、なに?」

「あ、あのね、私ね……、」

「……なに、」


「か、看護師になりたいの!」



え……そうだったの?

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