第12話

「ねえ、月島さんて、」

滝川君は私の参考書を手に取ってパラパラとめくる。

そんな彼の姿を見てハッとする。

今この教室には私と滝川君だけ。

ちょっとドキドキした。

滝川君は至って普通だけど。


「将来の事とか考えてる?」

「え?あ、まだそんなにはっきりとは……、」

考えてはなかった。

そう言ってると髪をひとつに束ねていたゴムが偶然切れた。私の肩までの長さの髪がパサッと耳元で音を立てた。

今朝だいぶ髪ゴムが弱ってたなと気づいていた。

落ちたゴムは滝川君が拾ってくれた。


「あ、ありがとう。」

そう言って彼からゴムを受け取ろうとすると、


「月島さんて……そんなに髪が長かったの?」

「は?」

滝川君がそう真剣に言うから私はちょっと訳が分からなかった。

「あ、学校では束ねてるから。」


「……そのままの方がいいと思うけど。」


え?今、なんて言ったの!?

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