第9話

「ねぇ、はなちゃんは父さんのどこが好きなの?」

夕食の片付けをしている母親に後ろから声をかける。

その細い身体がビクッて反応して僕は笑ってしまった。


「セツ!何言い出すの。」

振り向いたはなちゃんの顔は真っ赤だった。

自分の母親ながらこういう反応が可愛いと思う僕ってちょっとマザコンなんだろうか。


「だってね、父さんの感情が読み取れなくて苦労してんの。」

「そんなの私もよ。」

「でも好きなんでしょ?」

「親にそんな話を……、」

はなちゃんが困っている。それでも僕は続ける。


「……僕は2つ困ってる事があって、」

そう言うとはなちゃんはちょっと心配そうな表情で僕を見上げる。

「ひとつは、父さんが解決してくれたんだけど。」

「医学部に行かない話のことよね?」

「まあ、そうだね。」

「もうひとつは?」

はなちゃんの声に僕は直ぐには反応出来なくて、ちょっと俯く。

ひとつ深呼吸する。


「……好きになるってどういうことか分からないんだよね。」

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