第8話
僕が呼び止めると父さんは振り返る。
「……セツの自由だよ、医者にならなくても。自分のなりたい仕事につけばいいと思ってる。きっとはなも同じ事を言うと思うけど?」
「別に医学部に行くのが嫌なわけじゃないんだけど……、」
「技術系に進みたいんだよね?ソレでいいんじゃない?」
父さんは床に落ちている雑誌に目をやりながらそう言った。
家はこの地域では大規模な総合病院。
その息子が医者になりたくないと言っても父さんは動じない。
僕は本当に大事にされて育ってきたとわかっているけど、父さんの時々見えない感情に17歳になっても慣れることはなかった。
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