第75話

出来たら、こんな姿をシロに見られたくなかったな


そっと目を伏せる




「リナさんを守ると誓ったので、」






「貴方にも、あの人にも」



何年経ってもこの意思が揺るがないものである


その苦くて甘い事実に、



胸が痛い、と思った



その痛さに思わず顔を歪め


シロに見られたくないと私はシロの胸元へ顔を埋める。




「こんなこと、シロにして欲しくない」



もう、縋るようなものだった



「その銃を下ろして。それで、もうこの部屋から連れ去って」


明るい場所へと連れてって欲しい


この拘束を解いて、傷を手当して、疲れたから寝かせて欲しい



守ってくれるんでしょう





情けない姿で、この沈黙の時間が酷く長く感じる




カチャリ、と赤髪の男へ向けられていた拳銃が下ろされた。

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