第74話

「ダメ、シロ」


「リナさん、いいから目を閉じてください。すみませんが、音だけは我慢してください」

"直ぐに終わらせますから"




私が名を呼んでも、なにも反応がない



リナさん、と名を呼んでくれたとしても、こちらを見てくれない



その事実こそ怖いと感じた



ダウトの連中と喧嘩しても追われても、赤髪の男に無理やり抱かれそうになっても、怖いとは思わなかった





シロの中で私など映し出していないのではないかと



これが、今日初めての恐怖だと思った




「愁からの命?あの家から?違うでしょう。

こんな奴ひとりにシロの手を汚さなくて、いい」




「リナさんを守るなら、俺の手ひとつ汚れようが切り落とされようがどうでもいいです」



当たり前のように冷静に言い放ち、


目線は私の方に一瞬向かれ、私の姿を確認すれば日本人離れした綺麗な顔が傷ついたようにして歪められる





一度鉄パイプで殴られた時にできた痣



喧嘩や逃げてた時にできたであろう身体の至る所にある無数の傷


拘束されている身体


悲惨にも破られたシャツ、そこから見える胸元や首には恐らく無数の鬱血痕





滑稽な姿だなと思う。

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