第70話
ーカチャリ
黒く光るそのブツが私の肩越しから、赤髪の男へと向けられた。
日本では所有することのできない海外製
その拳銃は、よく見覚えのある奴の物だ
もうこんなの振り向いて相手が誰なのか確認しなくても分かる。
いや、そうじゃなくても…
後ろから私を抱き寄せるように回された腕や体の熱も
よほど急いで来たのか珍しく息切れしているその呼吸音も
昔からよく知っている奴のシャツから香るコロンの匂いだって
奴を形成させている全てが私には分かる。
前に回されている奴の腕の辺りのシャツをギュッと掴む。
「撃っちゃダメだよ」
どうして、こんな場所を、
私が、こんな状況になっていることを
知ったんだろう
「シロ」
自惚れかもしれないが、こうして助けに来てくれたんじゃないかと思えば、酷く安心した
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