第63話

赤髪の男の、切れ目の黒い瞳は、ジッと私を見据えるが、一切感情などないんだろう


色素の薄い唇が開く


「お前のいるこの部屋の下で何が起きてると思う」


「さぁ。知らない」


「戦争だよ、NiGHTSの連中が五十嵐と祠堂も引き連れて暴れてる」


ここにきて明かされる状況に目を細める。



なぜ、藍と椿が、ここに

私はなにも連絡しきれていないはずだが


本当は、すぐにでも下に駆け下りていきたいところだが


戦争だ、とこいつの言うその状況と藍達の安否が気になって仕方ない。


微かなこの部屋の外から漏れ出る音を拾おうとするも、それなりの防音設備になっているのか全然分からない



「お前を取り返そうと血なまこになってこの倉庫ん中で探してるぜ。俺はそれまでお前のお守り」


「私はいい。NiGHTSの奴らに下手な真似しないで」


「そいつはあいつらの出方次第だろ」


「ふざけんな」


「減らず口が。けど、安心しろよ。お前が必死んなって助けようとしてたアイツらは丁重に五十嵐達に返してやったから」


「…本当に」


「あぁ、本当だ」


その返答に、ホッとした。


奴の言葉を信じれば、タケル達は無事にここまで来た藍達に保護された様子だ。


それで、いい。


それだけでいいから、もう終わりにして帰ってもらって構わない

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