第53話
ヴー…ヴー…
携帯のバイブが、着信を知らせるようにして振動する。
下の奴らからか、なにか情報が入ったのか、或いは緊急の要件か
携帯を開こうと手を伸ばしたそれは失敗に終わるだけだった。
「つばき」
ーー…[つばき、]
皮肉にも、
キュッ、と小さく口を結うようにそう俺の名を呼ぶ里奈子の声が耳奥で聞こえた気がした。
だけど、現実で聞こえた声は、過去に何度も望んで何度も愛しいと思えた声だった
「仕方ないだろ」
チラリ、と画面に表示された着信履歴だけを確認する
ー【里奈子】
その名の表示に俺は少しだけ眉を寄せる。
アイツが電話で連絡してくるなんて珍しいこともある
なにか、あったのか。
少なくとも、早く出ないとならねぇな、そう思った
本音言えば、着信きた時に直ぐに出てやらなきゃいけなかった。
頭のどこか片隅でそんなことを思う。
助手席に座ったまま、既に2本目に突入した煙草を咥えていた藍の携帯もチカチカと光っている。
それが、誰からの着信かなんて、容易に想像がついた。
なぁ、藍
なんでだろうな。
大事にしてやらなきゃなんねぇ女がちゃんと近くにいんのに、
傍にいんのに
こうもして、また俺らは間違えるのか
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