第51話

「あいつ、いいな」


そう零したと同時に煙草を吸い終える。



「知ってる」


ムッ、とした藍を見て、「ふはっ」と声を出して更に俺は笑う。


こんな藍を見れんのも見せられんのも、後にも先にも里奈子だけだろうよ





「なぁ、藍。もう一本吸いたい」



俺は、箱からもう一本取り出した。



火をつければもう吸えるって時に



煙草が奪われ、ふとした邪魔が入った



「…おい、」




奪われた煙草の影を追うように俺はその方向へ振り返る。



繁華街の灯りが、暗い車内といるはずもないと思っていた、その人物の姿を綺麗に映し出していた。



苦い、と思う感情が渦巻いて、そして濃くしていく



煙草より、苦い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る