第10話

「じゃあ、俺らも行くぞ〜」


最後は亜貴。


のらりくらりとした雰囲気を隠さぬままに、ここに残る面子の何人かを引き連れる。


「なぁ、藍。藍に絶対的な忠誠心持ってる波玖がこうやってワガママ言ったんだ。帰ってきても怒ってやるなよ」


帰ってきた後の波玖に優しくしてやれと警告する亜貴の言葉に、藍は少しだけ考える素振りを見せる。


「……じゃあ、ゲンコツくらいはいいのか」



なにをそんなぶっ飛んだことを



「おめーあいつの母ちゃんかよ。まぁいいんじゃねぇの」


「波玖は家族なようなもんだ、ホントはかなり心配してる」



「あーはいはい、でも手加減してやれよ。あ、あと。おめーこいつの管理もしっかりやれよ。ウチのお嬢様が1番危ねぇ」


クイッと人差し指を私へと向ける。


「亜貴、さいあくさいてい」


むすーっと、気に食わないという気持ち全開にして亜貴に突っかかる。


「ひで〜おんなじゃねぇの。んじゃ、また今度亜貴さいこうって言わせてやろうかね」


そんな私を見て、緩やかに口元のカーブを描き、トントンと自分の唇へ人差し指をノックする。


ド変態。しね。


言った分だけこいつからは返ってくるから心の中に文句は仕舞い込みふいっと顔を背けた。

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