第9話

返す言葉を探してる私に気にせず、「おい、行くぞ」そう言って何人かの面子を従えて椿はこの空間から出て行った。






「じゃあ、俺も頑張ろうかね〜。さやちゃんとの約束はお預けじゃねぇの」


ふぁ、っと気の抜けた息を漏らし背筋を伸ばす仕草はダラけた野良猫そのもので、

こんな時でも緊張感ゼロを見せつけてくれる。



「あーちゃんってそーゆう所本当に変わらないよね」


そんな雰囲気に対してなのか、それとも女癖に対してなのか、冷ややかな目線で攻撃開始する陽向。



「ナイスなツッコミしてくんじゃねぇよ、ひな。つーかよ、おめーも落ち込んでる暇なんてねぇんじゃねーの?」


「…ッ、わかってるよ!」


亜貴に図星つかれた陽向は可愛らしい顔に反して盛大に舌打ちをかます。


そして、自分の近くにいる面子に目配せさせれば


キリッ、と覚悟を持った表情で、


「元気いっぱい陽向くんチーム!行くよ!」


……なんとも言えない、締まらない合図を出した。



もちろん私を含め藍も亜貴も、そして面子達もポカンと一瞬の間をあけ黙り込む。


その間にも気にせず、「じゃあ行ってくるね〜りなちゃんも大人しくしてるんだよ〜」なんて私に言葉を投げかけ、軽い足取りで椿同様にこの空間から去っていく。



「「「……は、、はい!」」」


なんとか絞り出したであろう声を揃えて急ぎ足で陽向の後を面子達が追っていく。



ーー…"陽向さんそれ締まらねぇっすよ"


ーー…"俺いつか言おうと思ってたっすけど、いい加減その呼び方やめません?"


ーー…"もっとかっけぇのがいいっすよ"


ーー…"なに?!文句言い過ぎじゃない?!"


嘆く面子達と反論する陽向の声が騒がしく最後まで響き渡っていた。

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