第8話
「ひな」
亜貴が陽向の名前を呼ぶことで、陽向は大きく肩を揺らす。
「ハクちゃんにそんなこと、1番させちゃダメなのに…」
ポツリ、そう呟くように言って、陽向の不安げなその表情の奥には、奴の顔が浮かんでいるんだろう。
何色にも染まることのない、ホワイトブリーチの髪をした奴の顔が。
「1週間っつったんだよな、あいつは」
飄々とした佇まいのままの椿から、奴が吸う煙草の銘柄の香りが漂う。
こんな時でも椿は吸いたいらしい。
「あぁ。椿、やってくれるか」
キングのその言葉だけで、椿は瞬時に答えを導く。
流石…No.2で、キングの右腕なだけある。
香水とそして、煙草の匂いが私の周囲を支配する。
「分かった。けど、あいつの身を最優先にしろよ。…波玖は藍の待てと止めの指示がねぇと無茶しやがる」
ダークヘアの髪が靡いた。
「あぁ。そこは俺の役目だ」
緩やかに口元をカーブさせた藍を確認した後、
椿はそのまま私の髪をクシャりと撫でる。
「里奈子。そんな顔してるとまた波玖に可愛げねぇとか愛想ねぇとか嫌味言われるぞ」
「なにそれ」
「まぁあれだ。連れ戻してやるから、アイツにも笑った顔見せてやれよ」
「…」
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