第91話

こんなの恥ずかしすぎる…屈辱だ。


藍の顔を見れずに私は俯いた。


「泳げないのか」


だからそう言っている


小さく頷く。



「顔上げろ、里奈子」


その言葉の通りに私は従う。


なにかバカにされるんじゃないかと思っていたが、奴のその表情は全然そんなことはなかった。



優しく、それでも少し苦笑混じりのそんな表情。



「お前、そんなところで素直になれんだな」


と。


どう返事をしていいのか分からず私は口を閉ざしたままにする。



「掴まってればいいだろ」


「ーー…っ?!ちょっと、」


その動作は本当に簡単で、吃驚するぐらいに一瞬だった。


想像もしてないあまりにも突然すぎるその行動。

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