043.

第90話

藍と海辺まで歩き、足先ぐらいをちょこんと海水に触れさせてみた。


「冷たい」


ちょんちょん、と更に触れてみる。


初めて触れた感覚だ。


暑いから余計気持ちいいかもしれない。



「里奈子」


海水の水を足元だけで遊ばせてやっていれば、その様子をボケっと見ていた藍が私の名前を呼ぶ。



「もう少し入ってみるか」


唐突は提案に、ピタリと私の足元の動きは止まった。



「どこに」


「海」


海面が太陽に照らされてキラキラと光っている。


藍は、海に入ってみるかと提案をしているのだ。


……興味は、ないこともない。



ただ、私の場合は、



「…泳げない」


恥ずかしすぎるその事実に、消えたなくなりそうな程の声量でそう言った。

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