第78話

「ささ、彼氏さんご覧下さい!」


先程消えた女の声が再び聞こえてくるではないか。


というか、さっきからその彼氏って誰のこと言っている。


大興奮の女とは真反対の相変わらずな無表情のまま半ば無理やり連れてこられたであろう藍が目の前に現れる。



「「「これで決まりですね!!」」」


女達の声が一斉に揃った。見事なまでに。



その声に釣られるかのように、奴のダークブラウンの瞳は私の方へと向けられた。




「……」


藍の瞳が見事なまでに見開かれ、そしてその綺麗な顔をこれ以上ないような驚いた表情へと変身させたのだ。


あんた、こんな驚いた顔もできるんだ。



いつもの無表情な藍からは想像もできない程に固まっている。


「藍」


ぴくり。

肩を上げて反応を示す。


「あ、あぁ」


少し焦ったような声でようやく我にかえったらしい藍は私から視線を逸らす。

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