第64話

「さあ、知らねーよ。俺に聞くな」


聞かれたとしても、喜んで通すわけはないけど。


自由奔放なあの気ままな女の笑った顔が過ぎる。




「いいな、あの女。とっととコイツやっちまってあと追うぞ」


「けけけ、こんなひ弱そうな男一人だけだからな。簡単だろ」


体格付きのいいアホ共からみたらそう見えるだろうな。


俺、細いし。 肌も病的なほど白いから身体弱そうに見えるし。髪も肌も着てる服も全部白い。


「なに、それ俺のこといってんの」



ーーびびび


耳の奥底で、耳障りなセミの音よりも遥かに五月蝿く警報機が鳴ってる…気がする。


ーーーびびびびび


大きく大きく、耳の中で木霊する。


昔、色なんかない向こう側にいた時、毎日のように耳の奥底で鳴っていたこの音も随分と聞いてなかったな。


残念だけど、その音を止めてくれる奴なんて今はいない。


「ははっ」


空笑いが込み上げてきそうだ。


雑木林のこん中じゃ暑さも分からないな。



ーーびーーーーーびーーびびびびび

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