第65話

警報機の音が最大値だ。



俺しか聞こえないであろう、警報機。


「……ここに俺じゃなくてあの人が残れば優しくしてもらえただろうに」


憐れで仕方ねぇな。


さっさとこの場からあいつを連れ出した亜貴さんだったら、適当にそこそこ痛めるだけで済んだかもしれねぇし、

もしかしたら話し合いだけですましてくれたかもしれない。


「でも、残念だね。俺優しくねーし」


サラリと、生温い風が俺の肌を撫でる。



いつの間にか、俺は奴らに囲まれる形でど真ん中に立っていた。


こんな馬鹿な男達に、こんな神聖な場所のど真ん中で囲まれても嬉しくない。


ギリギリ、とバットやらパイプやらを力強く握り締めている音が周囲から聞こる。


「お前一人で俺らをやれるってか!」


「ひゃひゃひゃひゃひゃ、こりゃ見物だなぁ〜!」


「おら、出来るもんならやってみろや」


ジリジリと詰め寄ってくるその距離はもう数メートルもない。

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