第61話

波玖の瞳が一瞬だけ色に染まる。


それが分かったのかどうなのか、


亜貴は、やれやれと横に首を振り波玖の肩を叩く。



「あんま大怪我させんなよ〜」


「さあ。それもアイツら次第ですね」


大怪我をするな、ではなく大怪我させるな、と言うあたり波玖の喧嘩の実力が意図も簡単に想像が出来てしまう。



「おい、こら。ガチャガチャガチャガチャ喋ってんじゃねーぞ」


「頭かち割られてーのかよ」


もう限界だと言わんばかりに殺気立たせるその集団が、もうその距離を更に縮めてきていた。



グッと、亜貴の冷たい手が、私の手首を掴む。



「お嬢さんは俺とこっちね〜」


間延びた言葉に乗せながら私は言われるがまま亜貴に引っ張られるようにしてその場を去ることになった。

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