第51話

広々とした日本庭園の中央を抜ければ見えてくるその旅館の入り口。

既に、藍と椿が誰かと話してるのが見える。


「まぁまぁ〜!遠いとこよくおいでになってぇ」


パチン。と軽快に手を叩く。

黒髪を上品に結い、髪色と同じ黒に綺麗な花が鮮やかに描かれている着物をきている女が、私達を出迎える。


年齢的には40後半から50前半だろうが、気品高く綺麗な女だ。


「今日は女も来てる」


「あらまぁ〜!藍くんから聞いてたけど、アンタべっぴんさんだねぇ。誰の彼女かい?」


勢いの良いこの婆は、初対面の私に唐突な質問をぶつけてくる。


一瞬静けさが包む。



はぁ…とため息を吐き、その静けさを破ったのは藍だった。


「ミキ、部屋に案内しろ」


「あぁ、そうだったねぇ。その前に…里奈子ちゃん、だったかい?私はこの旅館の大女将のミキって言います。可愛らしくてべっぴんさんな子が来てくれて嬉しいなぁ。私とも仲良くしてなぁ」


藍にミキと言われたこの婆は、ここの旅館の大女将だったのか。

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