第50話

陽向は、ん〜と身体を伸ばす。


車酔いはしなかったらしいが、どうやら陽向も身体が痛いらしい。



「タケル達もいるの」


陽向の言葉を復唱するようにそう尋ねる。


陽向曰く、チーム全員を連れて来るのは無謀だが面子内である程度人数を絞り連れて来たらしい。


車はどうしたのか聞けば、藍の家が手配したらしい。


更に、この旅館も藍の家の所有物、所謂経営しているものだと言う。



……奴の家は金持ちなのか、親は何者なんだ。


だから、旅行に行く前の電話で、金の心配なら要らないとか付け加えて言っていたのか。


「ほら、ひなちゃんも里奈子ちゃんも突っ立ってんじゃなくて中入れよ〜」


自分の荷物を持とうとしたその手は空に切られる。


「持ってやるよ」


ようやく吸うことが許されたその煙草を口に咥えた亜貴は、軽々と私の荷物も持ってくれる。


飄々としていて、椿と…それ以上に女癖が悪いらしい亜貴だが、奴は特に女に対しては優しい。


絶対零度の笑みや瞳でも、言葉巧みに女を操ろうが、

女への気遣いは天下一品な奴だと思う。


「どーも」


亜貴のその気遣いに私は礼を言う。

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