第39話

再び車の中へ乗り込めば、


愁はいつも通りのきっちりとした様子に元通りになる。


先程の疲れきったような雰囲気は消えていた。


「愁、…来てくれて、ありがと」


ポツリと口元から思わず出たかのような言葉。



非の打ち所のない綺麗な顔をした奴の顔は、いつものような意地悪い顔ではなく優しげな顔になる。


「あぁ」


一言だけそう返事をしてくれれば、ぽんっ、とリズム良く私の頭を2回ほど優しく触れる。





また、来月。




動き出す車と比例して小さくなっていく木漏れ日の光を眺めながら、私は心の中で呟いた。

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