第15話

「飴玉やる」


これは昨日亜貴からかっぱらってきたものだが。


仕方ない。


「要らないよ、なんで」


「じゃあ、なにが欲しいの」


「別にそーゆうのないから」


さっきのコンビニでもそうだが、波玖は自分の事は全て飲み込む。


「いいから、この飴玉は波玖のものだ」


そこで歩いていた足を波玖は止めた。


「あんた、しつこいんだけど。陽向さん以上に鬱陶しい」


それは陽向に失礼でならない気がする。


その言葉なんか気にせず、とん、と私は波玖の手に無理やり飴玉を握らせた。


「これ食っとけば元気になる」


甘い物にはそんな効果があるってこの前シロが言っていた。


真面目に私はそう言ったのに、波玖は馬鹿にしたように鼻で笑った。笑いやがった。


そして、嫌そうに、でもほんの少し照れたようにホワイトブリーチの髪をグシャリと乱す。


「ほんとアンタってよくわかんねぇ。元気ないとかじゃねぇし。甘い物そんな好きじゃないし」


饒舌にチクチク嫌味を言ってくるが、その飴玉は手に握られたまま。


「まぁ、貰っとく」


素っ気なさ全開の波玖の礼ってやつだ。

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