第13話

波玖の歩調はやけに早い。


何も写してないようなこの虚無な瞳には、未だに私は写してもらうことは、ない。



「ねぇ、アンタさ」


ほら、そう。


また…


「前に陽向さんの話し、聞いた時どう思った」


「陽向の話し」


唐突なその質問に、思わず反復して返してしまう。



「そう。陽向さんとサキって母親の話し」


「なんでそんなことを聞く」


珍しく話しかけてきたと思ったらなぜその話だ。


その真意にたどり着けない私は深く眉を寄せる。


「別に、なんとなく。興味本位」


……らしい。



そんな中でも尚溜まり場へ戻る足は止まらない。


一瞬だけ、波玖はコッチを見た気がする。

その虚無な瞳が、私を一瞬だけ写した気がした。


早く、答えろ、そう言われてるような。


「…陽向にとっては血の繋がったたったひとりの家族だ。サキの事は憎いが、でも、陽向が居てくれて良かった」


それだけだ。

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