第12話

その男の横に立って歩いてるあの赤髪男もまた見覚えがある奴だ。



[なぁ、五十嵐。そこの女、欲しいっていったらどうする]


春先に、蘭高に紛れ込んでいた奴で、ダウトの幹部クラスの人間。


非常に危険人物。




「…アイツらもうここまで手、出してんだ」


そんなダウトの集団を見やれば、波玖は一切の表情にはなにも出さずに抑揚なくそう呟く。


そんな波玖を見て不思議と首を傾げる。


「戻るよ」


波玖は、珍しく自分から私の手を掴んだのだ。


ひんやりとしたその手。


私も冷たいから人の事言えないけど。


口数は少なく素っ気ない波玖は、感情がどこか抜けている。人はもちろん、動くもの全てを嫌うかのように全く興味を示さない。


それに加えて恐ろしく物欲もない。

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